序章

 以前に、ローザンヌ国際バレエコンクールの審査員をやっていた、ヤン師のクラシックバレエ、コンテンポラのセミナーを受けた。これまでの、「踊る」ということに対しての考え方が、大きく変わった。今まで、表面的なカタチにこだわり、基本となる動き方をしていなかった事が結果的に、高度なテクニックがつかなかったり、不必要な所に筋肉や脂肪がついたり、怪我を多くしたり、美しいラインがだせなかったりした。これらはみな、間違った使い方をしてきたから。
 このセミナーで重要だったのが、解剖学の授業。パリ・オペラ座バレエ学校など、海外は、クラシックを含めた舞踊専攻の生徒には、必ず、解剖学のクラスがついている。バレリーナは国家公務員と同じ扱いをされているので、カリキュラムは、とても充実している。日本では、なかなかそういった時間がもうけられていないのが現状。解剖学とバレエなんて本当につながっているのかと思うが、つながっている。
 科学とダンス、美を追求するとともに、それに必ず付随してくる怪我についても研究していく。
 そこで、今読んでいるのが、「やさしいダンスの物理学」ケネス・ローズ(著)と、「やさしいダンスの解剖学」・スパーシャー(著)である。ここでも、あるダンサーが、「物理法則を無視しているときに創り出しているものは、気楽な幻想にすぎない。」といっている。本当に美しいものを追求するためには、芸術的感性に専念するのもいいが、舞台に立っている時間よりも長い長いリハーサルで、舞踊の物理的法則みたいなものを考えていかなければいけないのだと思った。
 この本は、読み途中なので、先に、使うかわからないけれど。怪我に関する簡単な調査を、スタジオと、バレエ団でしてみた。