舞踊学2

身体はどのように動くのか、バレエの動きは、自然の法則からみたら非常に不安定なかたちにある。これらを安定した状態に保つため、骨格〜神経〜筋のバランスが発達し、その結果、重力に対して、できるだけの抵抗を少なくしたかたちを保つことができるようになってきた。直立姿勢の善し悪しが運動の効率を左右する重要な条件でありまた、美しさの条件でもあるが、骨格や関節の配列が正しくないと無用な筋作用や緊張が起こり、余分のエネルギーを必要とするうえに、運動効率も悪く障害を起こす事さえあるといわれる。前にも述べたように、クラシックバレエでは、股関節を開いて、脚全体を90度外側に向けるアン・ドゥオールという特殊な技術が基本になっている。これができると前後左右、上への移動範囲が広くなり、135度くらいまで上に上げることもできる。しかし、この技術は、身体解剖的からみたら不自然なかたちで、長期間の根強い練習が必要である。また、膝関節と足首を伸ばしたまま、股関節をまげたり、その反対の運動も要求されるが、これらも不自然な運動であり、練習によって習得できるものである。足は、身体の中でも、効率的で、強靭につくられた部分で、小さな組織で全体重を支え、身体を運搬し、空間に持ち上げるといったような驚くほどの運動を成し遂げる。普通人間は歩くとき足の裏をつけるが、スピードが増してくると、踵が床から離れる。つま先で立ったり弾んだりすることは人間には不可能であるといわれているが、バレエでは、トゥーシューズをはくことによって、つま先で身体を支えることになる。最小限度の面積の上でバランスを保つためには、足首で重心のコントロールが必要で、そのため、足の甲が前に出て、膝関節が後ろに押し込まれたようになり、しかも体重を支える筋力が必要とされる。これらのバレエの動きに対し、東洋舞踊を代表する日本の能では、股関節、膝、足首を曲げて、下肢を屈曲させて、すり足で歩く。自然となじみながら舞う踊り、身体の構造から考えたら、無理の無い自然な状態に近い。このように、身体運動は、外側から見れば空間に描かれたデザインであり、これはフィルム分析をすることによって、視覚的にとらえることができる。日常動作で、モノを持ったりする時、私たちは主に手先、足先など末端部を使う。これらの動きはエネルギー効率を求める空間移動をしており、運動デザインそのものには意味がない。しかし、舞踊の場合は、身体運動によって、空間に描き出されるデザインが視覚に訴えることを目的としているので、自ずと身体の使い方は異なってくるはずである。



月曜日に、彫刻家の展示を観に行った。やはり、自分の芸術作品が、モノ=カタチ、として残るのはいいなと思った。演劇とか、バレエは映像にしか残せないから、なんだか惜しい気がした。前に、気持ちから入っていく踊り方のことを言っていたけれど、テクニック基本+演じる、感じる踊り方をしてゆく。なんだかんだ言っても、これがなければ、人には伝わらないのだと、最近私自身よく思う。シルビィ・ギエムっていう有名なバレリーナがいるんだけど、彼女の踊り方は、冷たい。とか言われてきたけど、彼女は本当にテクニックがすごすぎて、観客は表現力とか、演技性とかをみる前にそっちに目がいってしまう。だから、冷たい踊りだ。と言う人が数多くいる。確かに、彼女の性格は、生意気で、自分にものすごい自信を持った人だって聞いたことがあるけれど、バレエに関して、その表現力は人並み以上のものを持っている事は確かだと私は思う。足を横に上げると、耳の横までいとも簡単に上げてしまうし。とりあえず、難しいテクニックを簡単技のようにこなしていく。今はだいぶ落ち着いてきて、前ほどのテクニックではないにしろ(普通の人だったら十分すぎるくらい今でもすごいが・・)表現力が最近になって認められてきているようだぞ。やはり、少し踊れなくなってきた30代くらいが、一番華なのかもしれない。