ワガノワ

「ワガノワのバレエレッスン」より。
19世紀後半に、ロシアはバレエの先進国となり、振り付けの巨匠M・プティパを中心に、バレエ王国が築き上げられてきた。この間につぎつぎと考案、改良された技術に蓄積。教師から生徒へ、口承のようにして受け継がれてきたそれらの技術の一つ一つを、正確にに最も的確な方法で習得することを、ワガノワは理論的に探求した。そして、さらに、バレエの古い伝統を持つイタリアとフランスのスタイルを分析し、優れた部分だけを取り入れて変形させた、ロシア派独特のフォームも新たに作り上げたのである。
ワガノワメソッドの大きな特徴;全身を十二分に使って躍らせる。かつては他のメソッドではあまり考慮されていなかった腕や上体の機能について、ワガノワは念入りに分析し、それらをどのように脚の動きに参加させれば跳躍や回転がスムーズに大きなスケールでおこなえるかを考え出したのである。上体を十分に使い、動きを柔らかく優美にみせること、上体は強靭に鍛え上げられているにもかかわらず、まったく力みがない柔軟さ、繊細な腕の動きや頭の向きによる優美な身のこなしは、ロシア派女性舞踊手の特徴だという。パを脚の動きだけでなく、必ず上体、腕、頭の動きと結びつける教育は、ロシアでは幼い頃から教育される。
基本的なアンディオールやポジションの使い方はどこの国でも同じだが、スタイルが大きく違ってくる。同じポーズでも使っている筋肉などは一緒だが、体の傾け具合や、顔のつける程度が大きく変わってくるのだ。基本的にロシア人は内脚が多いと言われている。そのような人のためにつくられた動き方なのかもしれない。日本でもロシア系の動き方はいたるところで使われている。
みな他の国のメソッドは否定するが、オペラ座にいるような骨格の人と、日本人が同じレッスンをしろといわれても無理である。体の使い方に必ず間違いが出てくると思う。生まれつきに持ったそれぞれの骨格を通して、その時代の子供たちに合わせた教育を教師たちは考えなければならないと思った。